和紙とは

そもそも和紙とは

『和紙』を辞書で引いてみると、

『ミツマタ・コウゾ・ガンピなどの靭皮 (じんぴ) 繊維を原料として、手漉 (す) きで作る日本古来の紙。強靭で変質しにくく、墨書きに適する。 美濃紙・鳥の子紙・奉書紙など。俗には、和紙に似せてパルプ・マニラ麻などを機械で漉いた洋紙も含めていうことがある。日本紙。わがみ。』

(goo国語辞書出典) 
と記載されています。

越前和紙を有する福井県和紙工業協同組合では、
靭皮繊維を用いて日本の水で流し漉きをした紙
を和紙としています。

それに対して新聞紙やコピー用紙をはじめとした、洋紙は『元々は西洋から伝わりパルプを原料とした、機械漉きの紙』とされ、元々古来から日本にある和紙と区別するための名称だと考えられます。

しかし現在では、パルプを用いた機械漉きの襖紙や障子紙も広く普及しているため、言葉の上での『和紙』と『洋紙』の境が曖昧になりつつあるとも言えます。

和紙と洋紙の違い (1.保存性)

和紙の保存性

突然ですが、『万葉集』をご存知でしょうか?

7世紀後半から8世紀後半にかけて編まれた、日本最古の和歌集……と学校で習った記憶がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2019年4月現在では新元号『令和』の典拠としても話題になっていますね。
この万葉集ですが、原本は見つかっておらず、その写本を残すのみとなっています。

しかし写本とはいえ、最も古いものはなんと平安時代中期に書写されたものと言われています。
平安時代と言えば、今から千年以上も昔です。

当時は機械などありませんので、紙と言えばもちろん手漉きの和紙です。つまり、和紙には千年以上も保存できる力があるのです。
それに対して、洋紙はせいぜいもって百年と言われています。


なぜ和紙と洋紙ではこれほどまでに保存性に差があるのでしょうか。

その答えはそれぞれの製造方法にあります。



原因物質リグニン

紙の原料となる植物の化学的な主成分は、セルロース・ヘミセルロース・リグニンなどです。
その中でリグニンは親水性が低く、これが多く含まれるほど、紙が弱く、また、光や酸素による紙の変色・変質を引き起こします。
新聞紙を太陽光に当てて放置すると黄色くパリパリになるのもこのリグニンの為です。


つまり、含有するリグニンが少ない紙ほど保存に適していると言えます。
それではリグニンに着目して洋紙と和紙を見ていきましょう。



洋紙とリグニン

まず
洋紙の原料となる木材パルプですが、パルプには『機械パルプ』と『化学パルプ』の2種類があります。

機械パルプは回転する砥石面に木材を押し付けて磨砕することで作ります。原料となる木材に近い重量のパルプ(90~95%程度)が作られますが、木の成分をそのまま含むため、パルプにもリグニンが多く含まれます。

続いて化学パルプですが、これは砕木を水酸化ナトリウムや硫酸塩・亜硫酸塩などで化学的に処理することで得られるパルプの総称です。
脱リグニン処理をされているため、リグニン含有率が少なく、機械パルプよりも保存性に優れます。しかし、化学パルプは原料の50%前後しか得られず、コストが上がるという問題があります。


また、印刷用であれば、その後のロジン定着の過程で硫酸アルミニウム処理をするのですが、この過程でセルロース・ヘミセルロースが劣化することで紙として弱くなります。




和紙とリグニン

一方、和紙の原料となる楮や雁皮といった靭皮繊維には、もともとリグニンの含有量が少ないのが特徴です。
さらにその少ないリグニンを除去するのに、灰や消石灰などを用いて緩やかに処理を行うため、繊維を傷めず強い紙を作ることができるのです。


和紙と洋紙の違い (2.繊維と強さ)

新聞紙などの洋紙に比べ、強く丈夫と言われる和紙ですが、その強さの秘密の一つに『繊維の長さ』があります。

手漉き和紙に使用される繊維の平均の長さは、それぞれ
楮:7.3ミリメートル
三椏:3.2ミリメートル
雁皮:5.0ミリメートル とも言われており、これに対し、
機械漉きの木材パルプの繊維の長さは2ミリメートル前後と言われています。


和紙に使用される繊維のほうが長いことがわかります。
そして繊維が長い程、一本の繊維に対する結合箇所(水素結合)も多くなり複雑に絡まり合うため、強く丈夫な紙ができるというわけです。

一般的なパルプを主原料とする障子紙にレーヨンやポリエステルといった、毛足の長い繊維を混ぜているのもそういった理由もあります。


ただしいくら和紙とはいえ、紙の宿命として『水に濡れると強度が著しく低下する』ということは述べておきます。

和紙の原料

古くは麻(あさ)、楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)などの繊維が使われていましたが、江戸時代になって三椏(みつまた)が使用されるようになりました。
現在では、楮・三椏・雁皮が和紙原料の代表となっています。



楮(こうぞ)


楮はくわ科の落葉低木で、成木は三メートル程になります。
栽培が容易で毎年収穫ができることや繊維が太く・長く・強靭であることから、幅広い用途に最も多く使用されます。

用途としては、障子紙・表具用紙・美術紙などがあります。
過半数が高知県産の土佐楮ですが、その他、那須楮や石州楮など各地で栽培されています。





三椏(みつまた)

三椏は沈丁花科の落葉低木で、成木は二メートル程で苗を植えてから三年ごとに収穫ができます。

繊維は細く・柔軟で印刷適正に優れ、日本において紙幣(日本銀行券)の原料とされています。
手漉き和紙への使用量は極僅かです。

主な産地は岡山、高知、徳島、島根、愛媛となっています。

三椏


雁皮(がんぴ)


雁皮も沈丁花科の落葉低木で、成木は二メートル程です。
繊維は細く光沢があります。
優れた繊維ではありますが、生育が遅く栽培が難しいので野山に自生するものを採取して使用するに留まります。

この雁皮100%を原料とした手漉きの和紙(雁皮紙)が、本来の『鳥の子』と呼ばれるものです。


また、本鳥の子はその原料によって、
特号紙(雁皮紙)、
一号紙(雁皮・三椏)、
二号紙(三椏)、
三号紙(三椏・パルプ)、
四号紙(マニラ麻・パルプ)

と分けられます。




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